高血圧の時、先に見直すのはDW?降圧剤?

透析と生活

透析の部屋です。本日は、「高血圧の時、先に見直すのはDW?降圧剤?」についてお話ししていこうと思います。

皆さんは血圧が高いとき、DWと降圧剤、どちらを調整してほしいですか?もしくはどちらを調整してほしくないでしょうか?

私の勤める透析室の患者さんの中にはDWを減らすことや、薬を増量することに抵抗感がある方もいらっしゃいます。DWを減らすことで体力が落ちてしまうことを心配していたり、もともと沢山飲んでいる薬がさらに増えるのは受け入れ難いですね。もしかしたら、経験がある方もいらっしゃるかもしれません。

今回は、血圧が高くなる理由とDWと降圧剤の考え方についてお話していこうと思います。

最後までご覧いただければ幸いです。それではよろしくお願いします。

そもそも透析患者さんはなぜ高血圧になるのでしょうか?

それには人間の体内の水分が関係しています。

腎臓がはたらいているときは人間の「体に入る水分」と「出ていく水分」は、「=」になります。

透析患者さんは腎臓の機能が弱くなるため、「体に入る水分」を減らすために水分や塩分を頑張って抑えていきます。最終的に尿がでない状態になっても、「体に入る水分」と「出ていく水分」は「=」になりますが、「=」でいられる時間は透析が終わった後の短い時間だけになります。どうしても「出ていく水分」が少なくなるので、残念ながら基本的には全ての患者さんで体内の水分が過剰な状態で過ごす時間が長くなります。

 体内の水分が過剰な状態は、つまり高血圧の原因になります。

透析患者さんの体内の水分の推移についてもう少し詳しくお話しします。

透析患者さんの体内の水分

腎臓は24時間働いており、体内の水分は一定に保たれています。しかし、透析患者さんは週3回4時間の透析なので、水分が透析前に向けて溜まっていき、透析の除水により一気に下がり、透析後からまた水分が溜まっていく。という特別な体内サイクルとなります。

言ってみれば透析自体が、腎臓が数日かけて調整する分をたった数時間で一気に除去しようとする方法のため、血圧が下がるのは当たり前なのです。そうならないように水分の推移を自然な状態に近づけようとすると、透析を7時間、8時間と延ばしたり、週に5回6回と頻回に透析を行うとよいことになるのですが、なかなか現実的にはできないのが実情です。そのため、この体液量の変化を含みつつ安定して生活できるポイントを探して、DW・血圧調整をしていくことになります。

では、今回のテーマの 高血圧の時にDWと降圧剤、どちらを見直すべきか? 結論から言うと、「まずはDWを適正に整え」「栄養や水分・塩分を見直し」「それでも高い場合は降圧薬の調整を行う」となります。

思っていた答えと異なった方、すみません。それではなぜDWの調整が先なのかをお話ししていきます。

そもそもDW(ドライウェイト)とはなんでしょうか?

日本透析医学会のDWの定義では「体液量が適正で、透析中に過度の血圧低下を生ずることなく、かつ長期的にも心血管系への負担が少ない体重」としています。

この「体液量が適正」がポイントです。

どんな人でも四季を通して多少の体重の変化があります。夏場は汗をかいたり夏バテで食欲がないなど体重が減りやすく、寒い冬には活動機会が減るので体重が増えやすいなどのように変化があります。これはつまり、筋肉や脂肪の増減があるということです。

筋肉や脂肪の増減は透析患者さんも同様です。ただ一見して増減が分かりづらいのは体に貯留する水分変化が大きく体重に影響しているためです。

それでは、脂肪・筋肉の増減はDWにどのように影響するのでしょうか。

分かりやすいように人の体を「筋肉・脂肪」と「水分」に分けて考えてみます。

「水分」はDWの60% 体内の分布は以前もお話ししましたが、ここでは分かりやすいように血液の量と考えてください。「筋肉・脂肪」は増減する「いわゆる太ったり痩せたりする」部分です。

この「水分」に「筋肉・脂肪」を足したものが「DW」となります。

例えば、DW55㎏の人は水分33ℓ+筋肉・脂肪22㎏となります。これがこの患者さんの実体重となります。DWあたりの水分は60%で「適正に」保たれています。

この方が、3㎏痩せたとします。

すると、DW55㎏のうち、水分は36ℓ(+3ℓ)+筋肉・脂肪19㎏ DWあたりの水分は65.5%で水分が過剰な状態となります。むくみが出たり、悪化すると心不全の危険もあります。そして血圧も高くなります。

そのため、DWを減量して水分が過剰にならないように調整します。

降圧剤よりDW調整が先の理由

この段階で、血圧が高いからとDWより先に降圧剤を増量した場合、血圧が下がりすぎてDWが減量できず水分が過剰な状態が続くことになります。

具体的なイメージとしては「透析前血圧が高くて、むくみもあるのでDWを下げるように言われているが透析をすると血圧が下がって具合が悪くなる、でも終わったあとや普段の血圧は高め」などです。

このように水分が適正になるまでDWが引ける前に具合が悪くなってしまう状態だと、DWを下げたくないとおっしゃる気持ちも分かりますね。

ただし、痩せた原因が食事を食べれない低栄養が原因の場合は、食欲が出てきた後にDWを戻していくこともあります。

ここでお話しした以外にも、動脈硬化などもともとの基礎疾患で高血圧の場合もありますので実際は水分の調整だけでなく患者さん個々によって対応は異なります。

以上となります。参考になれば幸いです。

まとめ

  • 一見して分かりづらいが筋肉や脂肪の増減は透析患者さんでも起きる。
  • 体内の適正なバランスは筋肉・脂肪の増減があっても「水分60%」が保たれる体重=DWの調整を行う
  • 増減の原因によっては食生活を見直し体内のバランスを整える
  • DWを適正にしてから、降圧剤の調整を行う

先ほどもお話ししたように、透析患者さんの体液はまるで「潮の満ち引き」のように透析前後で大きく変化します。体液が多い透析前は血圧が高めに、体液が減る透析後は血圧が低めになります。

これが、透析患者さんの血圧管理が難しい要因でもあります。

なぜかと言うと、透析開始時の血圧に合わせて調整すると透析中や透析後に血圧が下がりすぎてしまう危険があります。逆に透析後の血圧に合わせて調整すると、透析前の血圧が高くなりすぎてしまう危険があります。

そのため、血圧ノートをつけてもらうことで、透析のない日や自宅での血圧を把握することがDWや降圧剤の調整にとても重要で、これを見ながら先生は血圧の調整をしていきます。

では、どのタイミングの血圧を目安にすればいいのでしょうか?

明確な答えは出ていませんが、日本透析医学会雑誌に興味深い報告がありました。

それは「中1日空きの透析のない日の朝に測った血圧」が、「その患者さんの透析前と透析後を含めた1週間の血圧の平均とほぼ同じ結果になる」というものです。

月水金 の場合・・・木曜日の朝の血圧

火木土 の場合・・・金曜日の朝の血圧

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