こんにちは。透析の部屋です。
本日は、大切なシャントの管理についてお話ししていきます。
少し長くなってしまうので前半・後半に分け、本日は前半の~シャントの閉塞を防ぐには~についてお話ししていきたいと思います。
それではよろしくお願いします。
まずはシャントの重要性について少しお話しします。
透析では体にたまった不要物や水分を除去して体のバランスを自然な状態になるべく近づけ、それによって合併症を予防して将来的に活動できる状態を長く保つこと、つまり生活の質を保つことを目標にしています。
ですが、透析の時間は長くても1回5時間程度になり、除去できる不要物や水分には限界があります。ですが、だからこそ、この1回の透析の効率を最大化することが大切になると思います。効率のよい透析にとって最も大切なのは「十分な血液流量がとれる」ことです。つまりシャントが良好な状態であることが最も大切になります。
シャントを良好な状態に保つために必要な項目は次の3つです。
- 1シャントの閉塞を防ぐ (今回はこちらです)
- 2シャントからの出血を防ぐ (後半でお話しします)
- 3シャント感染を防ぐ (後半でお話しします)
1~3を予防し、異常があれば早期に発見することが大切になってきます。
では、それぞれ順番にお話ししていきます。
透析では治療を行うために毎分200ml程度の血液を循環させます。通常この血流を静脈でとることはできないためシャントを作成します。
このシャントは動脈血を静脈に返すという体の自然な流れとは異なるものです。そのため圧の高い動脈の血流に耐えられるように静脈が太く強くなろうとした結果が狭窄の原因となります。
狭窄をそのままにしておくといずれは閉塞してしまうため、この段階で早めに発見することが重要になります。
閉塞してしまうと、血管の再手術が必要になることもありますが、早めに発見できれば手術よりずっと負担の少ない治療で対応できる場合があります。
1シャントの血流は保たれているか
シャント側の手を胸より上に挙げてみて、シャント血管がへこんだりしていないか確認してみてください。
2シャントの音を聞くこと
聴診器で毎日シャントの音を確認してください。
狭窄していると高い音になっていきます。閉塞などで血流が減っていると音が小さくなるので注意が必要です。また一時的に血圧が低下しているときにもシャント音が小さくなります。普段の自分のシャント音と異なることがあれば透析の時にスタッフへ伝えてください。
外出先などで聴診器がないときは、シャントに触れて「ザーザー」という血液の流れがあることを確認してください。これを血液の振動という意味の「スリル」と言います。シャント音=スリルと同じと思ってもらって大丈夫です。
3腫れを伴う内出血がないか
現在はエコー下での穿刺などもありますが、血管は目に見えないものですので穿刺を失敗してしまうこともあります。(本当にすみません)そしてその際は少なからず内出血が起きてしまいます。通常は青紫色の痛々しい色になりますが腫れることはほとんどありません。しかし、内出血部分が腫れる場合は血腫ができている場合があり血管の狭窄、閉塞の原因になります。腫れている場合は透析スタッフへ伝えてください。終了時の止血が十分でなかった場合も同様です。特に他の科などでバイアスピリンなどの血管をサラサラにする薬を飲んでいる方は注意が必要です。
穿刺を失敗した場合は無理して同じ場所を刺さずに場所をずらして内出血が落ち着くまで休ませるのが良いと思います。リドカインテープやモーラステープなどを貼っている方は部位をずらすので貼るところが分からない方はスタッフに聞いてください。
豆知識
通常の内出血の場合はまず冷やします。痛みの軽減と、血管を縮めて内出血が拡がらないように抑えることができます。見た目的には青紫色のときです。2~3日経つと内出血が徐々に吸収されていくようになるので逆に血流を良くするために温めるようにすると治りが早くなります。見た目的には緑~黄色の頃です。
4ドライウエイト(DW)は適正か、5血圧は低すぎないか
DWが適正より低い場合は、透析の時に過度に水分が引けてしまい、血管内の水分が不足することで血圧が低くなります。一時的であれば血圧の上昇に伴いシャント音は改善しますが、DWそのものの設定があっていないと毎回過除水から血圧低下、シャント閉塞のリスクが起きてしまいます。
透析中の血圧推移や、透析後の自宅での血圧の推移(自宅での血圧手帳は重要です!!)を見ながらDWを適正に保つことが必要です。
DWを適正にしても血圧が低めであれば、降圧剤の調整などがあります。
6嘔吐、下痢はないか
嘔吐や下痢は多くの水分が体の外に出ていきます。その結果、血管内の水分量が減って血圧が下がり狭窄の原因になることもあります。
本来、水分は控えめにする認識で合っていますが、体調によっては逆に水分摂取が必要になることも覚えておいてください。
下剤調節がうまくいかない一時的な場合もありますが、慢性の下痢や、感染症、その他疾患による場合もあるので症状があるときはスタッフへ相談してください。
7シャントで重いものをもつ、長時間曲げていないか
こちらは日常生活で気を付けていただく必要があることです。
血流が保たれることがシャントにとって大切なので、逆を言えば「血流が悪くなるような状況を防ぐ」ことを意識してもらうと分かりやすいと思います。例えば、手提げかばんをシャント肢側でひじ掛けするなど、シャントのある腕で重いものを持つと血液の流れが悪くなるのでシャント狭窄の原因になります。
他にも、シャント肢で肘枕をするのもNGです。以外に盲点になるのが、長時間シャントを胸より上に挙げた姿勢もNG。重力がかかることで同じく血液の流れが悪くなるためです。お仕事の内容によっては工夫が必要なので注意してください。
シャント閉塞はこれらの要素が複数合わさってになる起こる場合があります。
例えば、一部シャントが細くなっているが血液流量はとれているため、急ぎではないが様子を見ながらシャントの造影検査を予定する方針のところ、たまたま下剤を飲みすぎてしまい、たまたまその日の仕事で普段しない長時間のシャント挙上姿勢をとって、夜帰ってきた時にはシャント音が聞こえなくなっていた。というような感じです。
今回は以上になります。後半で続きをお話ししますので見に来ていただけると幸いです。
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