大切なシャントの管理~シャントの出血・感染を防ぐには~

透析シャント

こんにちは。透析の部屋です。

前回に引き続き、大切なシャントの管理についてお話ししていきます。

本日は後半の~シャントの出血・感染を防ぐには~についてお話ししていきたいと思います。

まだご覧になっていない方は、前半~シャントの閉塞を予防するには~も見て頂けると嬉しいです。

それではよろしくお願いします。

シャントを良好な状態に保つために必要な項目は次の3つです。

  • 1シャントの閉塞を防ぐ (前半でお話ししています)
  • 2シャントからの出血を防ぐ (今回はこちらです)
  • 3シャント感染を防ぐ (今回はこちらです)

1~3を予防し、異常があれば早期に発見することが大切になってきます。

透析患者さんは透析中に血液が固まらないように抗凝固剤を使っています。さらに血液をサラサラにする薬(抗血小板薬)を内服している場合は出血のリスクが高まります。特にシャントは血流量も多いため出血には注意が必要になります。

では、それぞれ順番にお話ししていきます。

シャントからの出血を防ぐために

針を刺した部分に異常はないか

 透析中は固定が不十分であったり、管が引っ張られると針が抜けて出血するリスクがあります。まれに刺さっている針穴からじわじわと出血するときもありますので透析中は定期的な穿刺部の観察が必要です。主にスタッフが観察していますがご自分でも時々確認してみてくださいね。

 透析が終わって止血が済んでからも出血のリスクがあります。それは、バンドを外すときやシャント肢に力を入れたときなどです。

 もし院外やご自宅で出血した場合は「とにかく出血している部分を押さえて出血を止める」ことが大切です。その際にできるだけ清潔なもので押さえることと、あまり強く押さえないこと、背中がもたれかかれるところで座って止血することを思い出してください。シャントは流れる血液量が多いため短時間でも出血量が多くなるので注意が必要です。

内出血、血腫ができていないか

 穿刺を失敗してしまったときや、返血の時に止血が不十分だと皮膚の中で出血が続いて血の固まり(血腫)ができて腫れてしまうことがあります。血腫がシャントを圧迫して狭窄、閉塞の原因になることもあるため止血は十分に行う必要があります。

余談ですが・・・穿刺を失敗した場合は、抜針後に手で押さえて止血した後、バンドを使って軽く圧迫します。5分程度経過してから止血を確認しバンドを緩め、痛みの軽減と内出血が拡がらないように湿布やアイスノンを当てています。

止血方法と自分の止血時間を確認する

 内出血や血腫を作らないためにも確実な止血ができるようにしましょう。止血するまで手で押さえる方法や、ご自分で止血できない場合などは止血ベルトを使用するなどでご自分に合った止血方法を選択しましょう。ただし、止血ベルトを使用する場合は長時間巻いたままだと狭窄の原因になるので止血が確認でき次第15分程度で外すのが良いかと思います。

 止血にかかる時間も個人差があるのでご自分の止血時間を把握しておくのが大切です。もし普段の止血時間を過ぎても血が止まらない場合は血管が狭窄している場合(狭窄している部分で血流が早くなる=圧が高くなるので止まりにくくなる。ホースの先端をすぼめているイメージ)も考えられるので普段の止血時間を知っておくことが大切です。

 

自分が使っている薬の確認(抗凝固剤・抗血小板薬)

 透析患者さんはシャントだけでなく全体的に皮膚も弱くなり傷つきやすいためちょっとぶつけただけでも内出血や出血することがあります。特に他の科などでバイアスピリンなどの血管をサラサラにする薬を飲んでいる方は出血しやすくなるので注意が必要です。

続いては 3シャント感染を防ぐために についてお話します。

透析患者さんは免疫機能が下がってしまうので感染しやすい状態となります。シャントは毎分500mlから1L程度の血液が流れるためシャントで感染が起こると全身に広がってしまう可能性もあります。

感染してしまうと、シャントへの穿刺ができなくなることがあり、特に人工血管だと作り直しの手術が必要になることもあります。手術までの間、透析をするために首や足の付け根から透析用の管(カテーテル)を留置するなど入院が必要であったり肉体的にも苦痛を伴うためシャントの感染を防ぐことは生活の質を維持することに直結します。

感染の原因となるのは、シャント造設時を除くと普段の穿刺や返血の手技に、日常のシャントを清潔に保つことなどシャント管理によるものが原因となりやすいです。

シャント肢は清潔に保つ必要があります。

シャントの状態を見てみましょう。

感染の兆候は、シャントが赤っぽくなったり、触ると熱を持った感じがして腫れている。針穴がじくじくしている。針穴から膿がでる。などです。

穿刺の際には針穴が集中すると治癒が遅れて感染の原因になるので適切な穿刺部位の選択と消毒が大切です(これは私たちスタッフの仕事ですね)穿刺前にリドカインテープなど局所麻酔薬を貼付する場合はなるべく針穴をずらして貼付できるように穿刺部位は分散・2か所でローテーションができると理想です。

爪は伸びていないか、かゆみはないか

感染を起こさないようにするにはシャントに傷を作らないことも大切になります。

爪は短くしてシャントをかきむしらないようにします。乾燥すると皮膚が傷つきやすくなるため保湿も意識してみてください。テープや局所麻酔薬の貼付剤でかぶれてしまう方は合ったものに変更したり、固定方法を工夫することでかぶれが起きないようにします。

シャントを清潔に保つ

シャントが汚れていると針穴や傷からばい菌が侵入して感染の原因になるのでシャントを洗浄して清潔に保つことが大切です。

シャントの洗浄方法

 石鹸をよく泡立てて、シャント肢全体こすらないようにやさしく洗います。洗った後は清潔なタオルやあれば使い捨てのペーパータオルなどでやさしく押さえるようにして水分を拭きとります。

清潔に保てない=日常的に清潔操作ができていないと思い浮かべる方もいるかと思いますが以外にも以下のようなケースでも起こります。

「夏場にクーラーが壊れて汗をかいたまま数日過ごしてしまった」「体調がすぐれずデイサービスの入浴をしなかった」など透析以外の日常生活の変化などから普段できていた清潔操作ができずにシャントの感染につながってしまう場合もあります。

特にご高齢の方は環境の変化を受けやすいため家族、病院スタッフ、在宅に関わるスタッフなど周囲の観察と関わりが大切になります。

以上になります。

長くなりましたがご覧いただきありがとうございました。

参考になれば幸いです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました